壊れた御守り
第18章 家族
「おばさん…どうして…」
凌華は慌てて、だけど小さくそう言った。
「遠慮しなくていいのよ。ここ2日、私も夫もよく笑うし、あの子も素直になってきた。凌華ちゃんが来てくれたからなのよ?」
そうだ。
あの笑わない父さんがよく笑ってる。
時々冗談も言うくらいだし、母さんだって前より元気に見える。
俺が素直かって言われるとわかんねぇけど…。
「でも、私…」
「凌華ちゃんはさっき、あの子に“愛されたい”って言ったわよね?
それは、自分が愛されてないって感じたから?」
「…はい」
おい、母さん。
何余計なこと聞いてんだよ。
それじゃあ嫌な思いさせるんじゃ…。
「そう感じることはないわ。凌華ちゃんはもう、愛されてるじゃない」
「え…?」
「自分の血のつながった人や親戚に大切にされるだけが愛じゃないわ。あなたを愛してる人は沢山いるじゃない」
母さんの言葉は柔らかくて、優しくて。
ゆっくりと諭すようだった。
「あの子や健太くん。それから麻美ちゃん。そして私たちも。みんなあなたを愛してるわ」
「おばさん…」
「うちにおいで。凌華ちゃんがこの手をとってくれるなら、私たちはもう家族よ」
しんと静まり返った部屋。
何が起こってるのか、ここからじゃわからない。
俺はつい、勢いよくドアを開けてしまった。