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壊れた御守り

第5章 麻美のバトン

行かなくちゃー



そう思って立ち上がった俺の肩を



大志がぐっと掴んだ。



「おい、小南。どこ行くんだよ」



「決まってんだろ。離せよ」



大志、早く離せよ。

俺は行かなきゃなんねぇんだよ。


早く、早く…。




「小南!!」



「うっせぇな!!いいから早くはなー」



言いかけた俺は、頬に鈍い痛みを感じた。



ぐわんぐわんと視界がおかしくなる。



床に倒れ込んだ俺はようやく大志に殴られたことに気付いた。



「お前、やっぱ変だ…。何してんだよ。今のお前、超かっこ悪ぃよ」



俺は何も言わずに、ただじっと大志を睨むように見上げた。


そんな俺を見て、大志はイラついたように


俺を勢いよくつかみあげた。



「ほら、立てよ。
立ってさっきみたいに殴れよ。
いつもみたいにつっかかってこいよ!!」


何も、言わなかった。



悲しそうに、冷たい目で俺を見る大志に、



何も言えなかった。


いつもの俺がなんだって?



自分では気付かなかった。



俺はそんなに荒れてたのか?



じゃあ、



あのとき、麻美の目には……。



ふと窓の外に目をやった。



麻美がスタンバってる。



行かなきゃ。



行かなきゃなんねぇんだよ。




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