壊れた御守り
第9章 約束
「慶ちゃん…なんで……」
麻美が泣きそうな声で言う。
困らせてごめん。麻美。
この約束は簡単で、小さな約束。
でも、だからこそ俺らにとって難しくて、大きな約束だったね。
「たとえ喧嘩してたって、この日は一緒にここにいるんだ」
できれば、そこで仲直りが出来るといいな。
「離れた場所で生活してたって、この日は一緒にここにいるんだ」
どんなに遠くにいたって、どこにいたってかけつけるんだ。
「お互いのことを忘れてたって、ここに来ることは覚えてるんだ」
ここで会って、その全てを思い出せるように。
「たとえ-っ!!」
たとえ、生きられないと言われていたって
次の年の花火を夢見るんだ。
もし、明日は迎えられないかもしれないと言われたって
俺らはここで、花火を見る。
綺麗な花火を目に焼き付けて
忘れないようにしっかり焼き付けながら、一緒に“明日”を迎えるんだ。
そうであってほしい。
そうなってほしい。
これは、そういう、
俺と麻美の
希望の約束。