壊れた御守り
第10章 プレゼント
「…健太?」
健太は教科書を広げる俺の隣に立った。
「お前、俺に遠慮してんの?」
「あ?」
「付き合ってねぇって、言ったじゃん」
あれか…。
「別にそんなんじゃねぇよ」
「じゃあなんでだよ」
「決めたんだよ」
「何を?」
「今はまだ、そのときじゃない気がしたんだ」
そう。今は付き合うとか、そんなことを言ってられない。
だから、
決めたんだよ。
「俺さ、医者になりてぇんだ」
「お前が医者?なんで…」
「医者になって、麻美の病気を治してやるんだ。完治したらさ、その時また告白しようと思ってる」
そう。中途半端じゃ駄目なんだ。
だからちゃんと、麻美の病気が治ったら
夢が叶ったら、そうしたらそれが“その時”なんだって思うんだ。
俺がそういうと、健太は静かに笑った。
「まぁ、お前らしいよな」
「え?」
「医大、難しいけどまぁ頑張れば?」
「当たり前」
健太は俺がそう答えるとドアまで歩いた。
ドアに手を掛けて振り返る。
「あ、お前の“その時”までに浅野が俺を選んでも文句言うなよ?俺は全力でアタックするつもりだかんな」
「うっせぇ。ばーか」
健太、それ言うためだけに来たのか?
バカだよな。あいつも。
だけど
ありがとな。健太。
お前が友達で良かったと思うよ。
俺は気を取り直して参考書を開いた。