素直になろうよ
第1章 枯れない涙
あいつは・・内海課長は、でっかいため息を一つつくと
「本当のところ、お前は帰すつもりなかったんだ」
と言って、また笑った。
胸がつかえたみたいに苦しくなって、喉の奥で鉄の味が広がった。
言葉が出ない。
「さて、やる事は山積みだ。明日の会議までに今までの資料全部差し替えだ。とりあえず、今できる事はそれくらいかな。明日からまた笑えるくらい忙しくなるな〜」
いっそこの状況を楽しんでさえいるような、課長の陽気な口調。
俺が投げつけたカバンを自分のデスクに戻して、書類棚から必要な資料をピックアップした。
こいつは・・・・こいつは、本当にアホなんだ。
「さっさと片付けるか」
そう言って、俺が引っ張ったせいで緩んだネクタイを、シュルリと解いた。
「だから!!」
もう我慢も限界だった。
椅子を蹴り飛ばす勢いで立ち上がり、あいつのデスクに突進して行った。
この人がどんな不利な仕事でもきちんとやりこなすことは知っている。
部下のこともよく見ているし、優しくもあり、厳しくもあり、実際うちのメンバーの誰もがこの課長を慕っている。
このくらいのピンチなんて、この人にしたら大した事じゃないかもしれない。
でも!!!
「あんたは帰れって言ってるだろう!」
内海の手を掴み、椅子から引っ張り上げて怒鳴ってやった。
「加瀬宮。曲がりなりにも、俺はお前の上司なんだけど・・?」
おどけたように笑うその顔が、真っ赤になっていて。
掴んだその手が尋常じゃないくらいに熱くて。
また胸の真ん中辺りが、きゅうっと締め付けられたように苦しくなった。
「本当のところ、お前は帰すつもりなかったんだ」
と言って、また笑った。
胸がつかえたみたいに苦しくなって、喉の奥で鉄の味が広がった。
言葉が出ない。
「さて、やる事は山積みだ。明日の会議までに今までの資料全部差し替えだ。とりあえず、今できる事はそれくらいかな。明日からまた笑えるくらい忙しくなるな〜」
いっそこの状況を楽しんでさえいるような、課長の陽気な口調。
俺が投げつけたカバンを自分のデスクに戻して、書類棚から必要な資料をピックアップした。
こいつは・・・・こいつは、本当にアホなんだ。
「さっさと片付けるか」
そう言って、俺が引っ張ったせいで緩んだネクタイを、シュルリと解いた。
「だから!!」
もう我慢も限界だった。
椅子を蹴り飛ばす勢いで立ち上がり、あいつのデスクに突進して行った。
この人がどんな不利な仕事でもきちんとやりこなすことは知っている。
部下のこともよく見ているし、優しくもあり、厳しくもあり、実際うちのメンバーの誰もがこの課長を慕っている。
このくらいのピンチなんて、この人にしたら大した事じゃないかもしれない。
でも!!!
「あんたは帰れって言ってるだろう!」
内海の手を掴み、椅子から引っ張り上げて怒鳴ってやった。
「加瀬宮。曲がりなりにも、俺はお前の上司なんだけど・・?」
おどけたように笑うその顔が、真っ赤になっていて。
掴んだその手が尋常じゃないくらいに熱くて。
また胸の真ん中辺りが、きゅうっと締め付けられたように苦しくなった。