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素直になろうよ

第1章 枯れない涙

徹夜覚悟で挑んだ仕事だったが、思ったより早く進み、あとは確認作業を残すのみとなった。
椅子の背凭れを思い切り後ろに跳ねあげるように、固まった身体を反らせてみる。
骨がきしむ音が響き、ふうと一息ついた。

それからようやくメールの着信を知らせる点滅しっぱなしの携帯を手にとった。

[残業は0時まで!今すぐ帰れ!]


0時丁度に受信したメール。
机に突っ伏して、胸の中の空気を全部吐き出すようなため息をついた。

「実際・・これはいかがなもんか」


メールをじっと見つめ、もう一度ため息をついた。


「なんで・・こんな・・たかが業務上のメールに・・俺ってやつは・・」
誰に伝わるともない言葉を垂れ流しながら、ようやく収まったはずの涙が溢れてきた。

「不毛だ。報われない。アレは男だ・・全然好きなんかじゃ・・ねえよ」


携帯をぐっと握りしめて、確認するようにもう一度声に出した。



「好きじゃねぇよ」

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