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素直になろうよ

第1章 枯れない涙

もう、ずっと前から自覚してた。
あの人の姿を探して、声を拾う。
きっかけなんてもうよくわからないけど、多分、初めから。
内海の笑った顔にやられていた。


作り物のような滑らかな肌とか、サラサラの髪とか、艶やかな唇とか。

そんなところに視線が向くようになって、自分が変態だったことを知った。

女子社員に次々に告白されていると知った時は、吐きそうになるくらい焦って。

でも焦ってもどうにもならない事なのも分かった。



好きだと好意を抱く気持ちは、本当に厄介なもので、自分ではコントロール不能だ。

俺とは全然違う別の何かが、俺の体を動かしているようですらある。

見るなと思っていても、視界にいれてしまう。
聞くなと思っていても、あの声を探してしまう。
話すなと思っていても、どうでもいい用件で声をかけてしまう。


俺の身体が何かに乗っ取られている。

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