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妄想しながら素直になろうよ

第7章 ラッシュで妄想

俺以外の奴に触れられて、そんな顔するなんて・・

ひどくショックを受けた。
課長が悪いわけじゃないのに、ふつふつと腹の奥底からこみ上げてくる苛立ちは、確かにこの人に向けられていた。





俺と内海の間に半身を滑り込ませているオヤジがいた。
俺の正面でモゾモゾと動く手。
その手は明らかに内海の尻に伸びていて。

前の方は見えなかったが、そっちでも内海にちょっかい出しているに違いない。

なんかもう、腹が立って腹が立って。


下の方でうごめいてる手を掴み、そいつの耳元で低く囁いた。

「痴漢なんていい度胸だな。ぶっ殺してやろうか?」

そうして、つかんだ手をあらん限りの力で捻じった。
痴漢はひゅっと息を飲んで、手を引っ込めた。

駅員に突き出してやりたかったが、男に痴漢されたなんて内海が恥じるに違いないから。
そいつの足を思いっきり踏んでやった。しかも踵の角で。
足の指の骨でも折れればいい気味だ。
課長に手を出すなんて、本来なら極刑だって免れない所だってのに。




駅に着き、どっと排出される人と、乗り込んでくる人の流れに流されないよう、今度こそ内海のそばをキープしようと踏ん張った。
もちろん痴漢野郎はそそくさと逃げるように降りて行ったが。



ドアと座席の隙間に飛びついて背を向けた内海は、痴漢にあったショックからか小さくなっていた。

俺の目の前に課長がいる。
俺の存在には気がついてないようで、相変わらず俯いていた。



誰でもいいのかな?
気持ちよくしてくれれば、誰にでもあんな顔して見せるのかな?

そうじゃない。と、否定できる材料を俺は持ってなかった。


確かめるため、と自分に言い聞かせて。
抵抗してくれ、と願いを込めて。


内海の尻に手を伸ばした。





内海は、かすかに身じろぎしたが、特に動く気配はなかった。
俯いたまま固まって、尻は触り放題だ。


なんで抵抗しないんだ。
期待してるのか?

なんで?

誰でも・・いいの?





喉の奥にツンと痛みが走った。
奥歯を噛み締めてないと、泣いてしまいそうだった。







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