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妄想しながら素直になろうよ

第8章 ファンタジーで妄想

そうして、朽ちてしまった木に力を送り込んだ。


まるで魔法のように、焼け焦げたはずの木はみるみる生気を取り戻し、枝がのび、葉が繁り、あっという間に隆々とした木に戻っていた。


「っ・・これ、は・・・」


「姿形はあんたと同じでも、俺は人間ではないってことです。森の主精ですから。さぁ、もう帰ってください。これから俺は森の再生で忙しいですから」


王子に背を向け、焼け爛れてしまった木々達に手をかざして回る。
俺の周りは次から次へと再生された木が伸びていった。


「加瀬宮。お前が・・好きなんだ」

「俺は人間ではないんです」

「それでも・・・好き、なんだ・・・」


内海はぼろぼろと泣きながら、想いを口にした。
父親である国王が強行したこの惨劇に責任を感じ、罪悪感を抱きながらも人では無いモノに恋い焦がれる。


「俺が・・あんたに何もしないうちに、さっさとこの場を離れて下さい」


そして・・同じように俺もこの人間に恋い焦がれる。

攫って閉じ込めて自分だけのモノにしたいと、ずっと思っていた。
だからこそ、木々達にも喰わせず、自分でも喰えずにいたのだ。

人間は俺たちの餌だったのだから。




「加瀬宮、俺にできることはないか?俺を喰ってお前の力になるなら・・喜んでこの身を差し出す。なんでもいい。何かお前の力になれないか?」


内海は跪き、俺を見上げて言った。



潤んだ瞳はどこまでも真っ直ぐで。
やっぱり好きだと思ってしまう。
分かっていた。王子が、こんな事をするはずがないと。



「あんたが俺に喰われると?」

「うん。食べて」


思わず笑ってしまった。

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