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妄想しながら素直になろうよ

第8章 ファンタジーで妄想

人間のくせに、こんなに可愛い成りをして俺を惑わせる。

「自分を喰ってくれなんて言う人間は見たことが無いですね。本気ですか?」


王子に歩み寄り、その手を取る。


「うん。加瀬宮、俺はお前のそばにいたいんだ」


「今なら、まだこの手を離してあげられます」


目の高さまで王子の手を持ち上げた。
そして引き寄せ、手の甲に口付けた。


「離さなくていい。お前のそばに在りたいんだ」


言葉もなく、お互いじっと相手の目を見つめ、そしてその距離は徐々に近くなり。




唇を重ねていた。




「森を元に戻すには、一度には無理です。俺の力も無限ではないんでね。あんたにも手伝ってもらいます」


その言葉に嬉しそうに笑う。


「俺を喰えば、お前の力になるんだろう?」

「力に・・・ね。なってもらいます」



内海の後頭部を掴み、強く引き寄せる。
形の良い唇を食み、薄く空いた隙間から舌を差し入れた。



「っん・・・ぅん・・・んんっ・・」

戸惑い縮こまる内海の舌を絡ませ、無理矢理吸い上げる。
頬の内側を抉り、歯列をなぞり、口内を余すところなく蹂躙し、唾液を混ぜ合わせてそれを啜った。

息もままならない激しい口付けに、内海は苦しげに呻いていたが、抵抗は一切しなかった。


「ふっ、はぁっ、はぁっ、はぁ・・・」


ようやく解放すると、肩で息をしながら。
頬を上気させ、瞳を揺らして、可憐に笑った。



「もう、逃げられませんよ。あんたは俺のモノです」


「今、喰われるのかと・・思った・・」


子供のように純粋に、にっこりと笑って。




この人に囚われているのは、俺なのかもしれない。
だって、この笑顔をもう手放すことなどできないのだから。

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