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気が狂いそうな快感の後に

第3章 誘拐猫とリーダーと

私とそのリーダーである男は彼の部屋に入った。

案外普通の部屋だ。暗殺者の部屋っていうくらいだから、もっとヤバい感じかなって思ったけど。
部屋は整理整頓されていて、機能性を重視した家具が置かれている。

デスクに書類が積まれていた。
恐らく、これは彼らの仕事のこと。
人殺しというものを紙にしたものだ。

彼は私をテーブルの前の椅子に座らせ、自分も向かい側に座った。

「俺はこのチームのリーダー、榊という。ショウからお前の処遇に関する詳しいことは聞いてるな?」

有無を言わさないような冷徹な口調だが、なぜか温かみを感じる不思議な口調で榊は言った。

「はい」

私が言うと、榊は低い声で続けた。

「俺のチームの千歳が迷惑をかけた。後で本人にも謝らせるが、先に俺から謝っておく。本当にすまなかった」

神妙な顔で頭を下げる榊。

「いや、そんないいですって。何か待遇も良くしてもらえるみたいだし、寧ろこっちが迷惑かけてすいませんっていうか」

何テンパってんだ、私。

「…茜は、少し変わっているな。まあ俺のような奴がそんなこと言うのもおかしいが」

「良く言われます。変なとこでポジティブで能天気だって」

「そうか」

榊は僅かに笑みを浮かべた。

なんだ、見た目ほど恐い人じゃあないのかも。

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