聖夜に天使は舞い降りて~angel only for me~
第5章 朝、夢と現実の間で……
「あっ、おはようございます♪」
そんな時、音のしていた方向から声がした。
「すみません、起こしちゃいましたね」
そしてキッチンからやってくるのは見慣れない女の子。
けれど昨日、一緒にあんな事をしていた女の子・・・。
その情景が表れては消え、表れては消えを繰り返し、僕は訳も分からず目をゴシゴシする。
「お腹すきましたでしょう?───」
彼女を見てはまた目をゴシゴシする。
「もうちょっと待ってて下さい? もうすぐ朝ご飯出来ますから」
更に目をゴシゴシする。
そして彼女は鼻歌混じりにキッチンに戻っていった。
戻るといってもここから目と鼻の先ほどしか離れていないのだけれども……。
「あれ?」
頭の中の情景とは違い、なんど目を擦ったとしても消えることはない彼女の姿(まぼろし)……。
目覚めたつもりでまだ僕は夢の中にいるのだろうか・・・。
それとも単に寝ぼけているだけなのだろうか・・・。
瞼が重いまま微睡(まどろ)んだ思考を巡らす。
zzzz……
いつしか泥船が沈むように再び夢の世界に旅立とうとしていた矢先だった。