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聖夜に天使は舞い降りて~angel only for me~

第1章 非モテボッチと白い羽根

ああ、クリスマスなんていっそ無くなってしまえばいい。


こんな日が誕生日と被っているせいで、僕はこの日にケーキなんて食べられなくなってしまった。


気付けばここ何年もバースデーケーキなんて口にしていない。


それは誕生日がクリスマスと被っている僕にとってバースデーケーキを自分で買って食べるという事は、例えるなら非モテな男子が(自分含め)2月の14日にバレンタインチョコを自分で買って食べるという悲しい行いをする事と同じだと思っているから……。


だから、それをする事が受け付けられなくなってしまった。


もちろん、誰かが祝ってくれるのならば話は変わってくるのだけれど……。


こうして自身のバースデー、及びクリスマスケーキを買うことすら惨めに感じてしまっている僕は、ケーキ屋やコンビニで自身のケーキを買う事もままならず、大して用事も無かったコンビニに立ち寄っては週刊マンガをあてもなく立ち読みして、大して要り用でもなかった食べ物や飲み物を買って店を出るという去年や一昨年と全く同じサイクルを繰り返していた。


しかも、立ち寄るコンビニはいつもは寄らないようなコンビニで……。


この心理は分かっている。


敢えてちょっと違う店に立ち寄る事によって何か変わった事が起こってくれるのではないかと、心のどこかで期待している事くらい……。


そして、そんな事をしていても何も起こらないし変わらない事だって……分かっている。


分かってる……、分かってるんだ。


けれども、どうしてもどこか期待してしまう……。


クリスマスも誕生日も、本来ならば特別な日。


こんな荒んだ自分にも何か特別な事が起こるのではないかと、起こってはくれないかと、期待してしまうんだ……。



そして、当然ながら特別な何かは起こる筈もなく、店員さんの「ありがとうございました」の声と共に店を後にした。

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