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聖夜に天使は舞い降りて~angel only for me~

第1章 非モテボッチと白い羽根

その瞬間、僕に向けて容赦なく冷たい風が吹きつけた。


どうやら運命はおろか気象ですら僕に対して厳しいらしい。


もちろんそんな事はないのだろうけれど、こんなモチベーションではそうも思いたくなる。


天気予報ではこれはクリスマス寒波だと言っていた。


地方によってはこの地域でもホワイトクリスマスはあり得るとも言っていたけれど、僕にとってはホワイトクリスマスと言うにはおこがましいくらいのただの曇り空で、一日中僕の心と同じようにどんよりと曇っていた。




いい加減周りの雰囲気に押し潰されそうな僕は、一旦立ち止まると逃げ場を求めるように空を仰いだ。


吐く息はいつになく白く、いつになく長く空を漂う。


きっと気のせいかも知れないが、今の僕にはそう思えて仕方がない……。


だって僕を取り巻く空気だけが……。


痛いほどに寒いから……。



そうやっていつまでも夜空を仰いでいると、何やら白い綿のような物がゆらゆらと舞っているのを見つけた。


それはだんだんと僕に近付き落ちてくる。


一瞬本当に雪が降ってきたのかと思いつつ手を伸ばしてみると、掴み取ったそれは夜空に映えるような一枚の純白の羽根だった。


この寒空に白い鳩でも飛んでいたのだろうか?


再び空を見上げるも、そんな様子には微塵も見えない。


一体どこからこんな物が……。


不思議に思うもそれを捨てる訳でもなく、ただ何となくコートのポケットに突っ込んだ僕は、また独り寂しく歩き始めた。

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