テキストサイズ

恋して桜!

第5章 井上さん、島田さん、天霧さん、千鶴が揃ったら

天霧「雪村くん、かたじけない。助け舟をありがとう。
して、皆さんでお茶ををのんでいらっしゃるの か。
宜しければ、これを。」

島田が天霧の持っていた包みを受けとり、開ける。

島田「これは…?」

天霧「先ほど、頂いた物ですが、 すいーとぽてと なる甘藷に和三盆を足した菓子だそうです。」

この天霧の言葉に、島田の顔が緩んでゆく。

島田「ほぉぉぉ。これは良い香りの菓子ですね」
ウキウキという、効果音が聞こえそうなくらい島田の喜びがこちらにも伝わる。

その様子を見た井上、天霧、千鶴は顔を合わせて微笑んだ。

千鶴「私、お茶をもう一つ持って来ますね。」

天霧「かたじけない。」


井上「天霧さん、敵でなければ貴方とは仲良く出来そうな気がしますよ。」
井上らしい、父親の様な微笑みで天霧へ言葉をかける。

天霧「井上殿、ありがとうございます。
私も、井上殿とは何故か同じような立ち位置な気がして…損な役回りですね」
天霧は風間と不知火の顔を思い出しながら、井上に話した。

井上「まぁそれも、私で無いとと言ってくれる娘の様な雪村くんもいるし
隊士の仲間もいるからね。悪くは無いよ。」

島田、心の声。
井上組長と鬼の天霧さんが通じている。
止めるべきかもしれないのに、何故か微笑ましい。
たまには休戦もいいか。

島田の温厚な所と目の前に広がる甘味の魅力が、この島田の考えを産んだのだろう。
島田もコッソリ井上ポジションだと、筆者が思っている事はまた別の話…

そうこうすると、千鶴が戻ってきた。
千鶴「お待たせしました。天霧さん」と、声をかけながら天霧へお茶を差し出す。

天霧「煎茶ですか。京では玉露が有名かと思っていましたが、煎茶も美味いですね。」

井上「あ、これはね。私の知人に頼んで駿河の口の茶葉と宇治の茶葉、薩摩の茶葉を、それぞれ送ってもらい、いい塩梅で混ぜてお茶を入れてもらったんだ。」

天霧「ほぉ。それは興味深い!
この茶の様に、人も鬼も争いなく、穏やかに健やかに助け合ってお互いを伸ばせると良いのだが…」

井上「そうだねえ。ただ、皆、志があって己の道を信じて進んでいる。
なかなかすべての人の誠が同じ向きに揃うのは難しいかもしれないね。」

天霧「確かに…」



ストーリーメニュー

TOPTOPへ