テキストサイズ

他人事

第3章 姉の死

鈴木恵子の死から半年が経った。あずさは弁護士の仕事の傍ら、友人の正が報告してくれる情報を元に、恵子の死の真相を探っていた。しかし情報があまりにも少なく、目撃証言も皆無に等しいため、警察側での捜査も難航していた。

そんなとき、あずさにある人物から連絡が入った。
「もしもし、あずささんですか?」
「その声はお義兄さん?」
「そう、健二だよ。久しぶりだね」
「どうしたの急に」
「いや、実は麻子が3日前から行方不明なんだ。心当たりないかなと思って」
「姉さんが行方不明ですって?そういえばこの間妊娠七ヶ月に入ったばかりよね」
「そうなんだ。3日前に産婦人科に行くって言ったきり帰ってこなくて」
坂口健二はあずさの姉麻子の旦那である。麻子が消息を絶った日に警察に届け出をしている。あずさには麻子について思い当たる節は全く見当たらなかった。
「出産前に行方不明というのは気になるわね。わかった、こっちでも調べてみるわ」
あずさはそう言って電話を切り、念のため正にそのことについても伝えておいた。

三日後、正から連絡が入った。
「もしもしあずさか?」
「そうよ。どうしたの、何か分かった?」
「残念なお知らせだ。今朝二丁目の廃工場で、君の姉さんの遺体が発見されたよ」
「なんですって!」
「しかも、旦那の健二は前日の深夜に体中を掻きむしって、心臓発作で死亡していた」
「そっそんな‥‥‥」
あずさは再び掛け直すと正に約束し、その場に泣き崩れた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ