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姉さんは僕のお人形

第8章 拷問




【冷side】

「…うん、そっか。ありがとう。
結衣がいてくれて良かった。」

携帯を閉じる
今のところは上手くいっている
さて、僕もあの場所に向かわなきゃ…

玄関で靴を履いていると、
「冷くん。やっぱり私も行きたいんだけど…ダメ?」

姉さんの声
そうしてあげたいけど…無理だ

「姉さん、優斗に酷い事されただろ?また姉さんが優斗の元に行けば、何かされる可能性もある。
もちろん、そんな事させないけれど…でも、万が一を考えてだ。
僕は、もう姉さんに嫌な思いをさせたくない。」

「…バカ」
「えっ、」

まさか、そんな事言われるとは思わなかった
ケンカもした事ないし、初めての経験だ

「冷くんは、一人で抱え込む癖がある。それはそれでかっこいいけどさ、可愛くないよ。素直じゃない。私に気遣ってくれてるのは分かる。でも、そんなの私が嫌っ
私ばかり何かしてもらってるもん
私、冷くんの姉だし、冷くんのために何かしたいよ。抱え込まないでよ、冷くんだけ辛い思いするなんて、姉として許せないんだからねっ!」


何だかやっと本当の兄弟になれた気がする
姉さんが本音をぶつけてくれた

抱え込まないでよ、か…

「でも、今回はやっぱり降りる。
冷くん達の邪魔になりたくないし
だけど、これからはちゃんと頼って…って、きゃ!」

「…ごめん、姉さん。ありがとう
…嬉しかった」

涙が一粒出たのを見られないように、姉さんを抱きしめた
だけど、語尾が少し震えた
気づかれてないかな?

「冷くん…うん、頑張ってね」

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