シアワセ∞経路
第6章 止まらない気持ち
どうすることもできない寂しさを紛らわしたくて、息が使いが荒くなるほど早く走った。
早く、遠くへ……遠くへ行きたかった。
しかし、その衝動を歩道の赤信号が邪魔をする。
仕方なく立ち止まっている時、太ももにふわっとした物が何か当たった。
「お姉ちゃん、ごめんなさい」
「あっ……、大丈夫だよ」
幼稚園児くらいの女の子が、ピンク色の耳の長いウサギの人形を抱きしめていた。
どうやら、その人形の耳が当たったようだった。
「すみません。こら!ウサちゃんの人形をぶん回しちゃダメだって言ったでしょ」
隣にいた母親が私に謝り、優しい口調で女の子を叱る。
「ウサちゃんがぐるぐる回りたいって言ってたのーっ。それよりママ、早くパパに会いたい。ウサちゃんだってそう言ってる!」
「はいはい」
「今日はママとパパが二人でご飯作ってくれるんでしょー」
「うふふ。楽しみにしててね。パパを迎えに行ってさっさとお家に帰ろうね」
信号が青になり、横断歩道を手を繋いだその親子が歩いて行く。
聞こえた会話から、温かそうな家族だって想像できる。
幸せそうで羨ましい……。