シアワセ∞経路
第16章 あの日に戻れたら
ソラはズボンに両手を入れて、どこか遠くを見て壁に寄りかかっていた。
黙っていても、爽やかオーラが出ている。
「あの人、誰か待ってるのかなー?カッコいいんだけど」
「彼女いるのか聞いてみない?」
「狙ってもいいのかなー?」
通りかかったうちの高校の女子数人が、少し離れたところから楽しそうに噂をしていた。
今すぐに声を掛けようか、迷っているようにも見える。
でもソラは他の女子からの視線には気づいていないのか、見向きもしていないようだった。
学校から出てきた私にやっと気付いたのか、こっちを見て微笑んで手を振ってくれた。
急いで近づいて、ソラの腕を引っ張って高校から遠ざかる。
「ちょっと…!昨日、公園で待ち合わせって言ったじゃん」
「都合悪かった?」
整った顔立ちで満面な笑みで答えられると、これ以上追及する気もなくなる。
迎えに来てくれるのは嬉しいけれど、他の人から目立ってしまうからカッコいいって罪。
「そういうわけじゃないけど……。
他の女の子が、ソラに話し掛けようかなって噂してたから…。
目立ってるとこに行くのが恥ずかしくて」