シアワセ∞経路
第4章 あなたのとなり
「おまえってさー……」
「おまえじゃなくて、ちゃんと名前あります」
再会する前は私のことをちゃん付けで呼んでたのに、今はおまえ呼ばわりで嫌だった。
「うっ……。じゃあ、……小神さん」
「その呼ばれ方は、大空先輩から言われるのはちょっと……」
「小神風子さん」
「フルネームで一々呼ぶんですか?」
「……風子さん」
「そんなに気を使わないで下さい」
「おい。そう言うおまえだって気を使っているだろ。
敬語で話してくるし、先輩なんて言ってくるし、人のこと言えないじゃないか」
「当たり前じゃないですか!中学生から先輩後輩があるし、そう言うものじゃないですか」
「なんかそれムカつくからやめろ。昔みたいに普通に話せよ」
「あ……。うん……」
大空先輩だけが、私から距離を作っていたわけじゃなかったんだ。
私も些細な言動も、距離を作っていたのかもしれない。
「あの……、呼び捨てで呼んでいいよ」
「……分かった。じゃあ、風子って呼ぶから」
「うん……」
名前を口にされた瞬間、またドキッとしてしまう。
小学生の頃とは違う、低い声で名前を呼ばれたせいなんだろうか。
その余韻を隠すように、私は大空先輩のことをなんて呼ぼうかと考えた。