シアワセ∞経路
第5章 共力者
「あっ……。彼女さんに失礼ですよね」
手を放そうとしたら、ギュッと引き留められた。
「大丈夫。ちょうど、さっき別れてきたとこ。これなら問題ないだろ」
「別れた……?」
颯太さんの表情からは、失恋という悲しいことがあったように全く見えなかった。
「別れるなんて、よくあることだから気にしなくていいから。ところで、今日は塑羅緒と一緒じゃないの?」
「はい。さっきまで一緒に帰ってましたけど……なんだか一人になりたくて」
話を聞いてくれるのか、颯太さんは私の隣に座った。
肩がもう少しで当たりそうなくらい近くに座るから余計に緊張してしまう。
「喧嘩した?」
「いや、そんなんじゃないです。私が一方的に勘違いして、モヤモヤしてるだけです」
「なに勘違いしたの?」
「ソラが女の子と話して喜んでたから、その子のこと好きなんじゃないかって……」
「ふーん。……ってか、風子ちゃんって塑羅緒のこと好きでしょ?」
私が、ソラのことを……好き…?
「なっ……、なんでそうなるんですか!?私は、ソラの女嫌い治すのに協力してるだけで……」
「だったら、もっと元気な顔して応援しなくちゃ。あいつも喜ばないよ」
「そう……、ですよね。本当は応援してあげなくちゃいけないのに、女嫌いが治って欲しくないなんて思う私って……ずるいですよね」
心のどこかでそう思っていた。
だんだんそう思うようになっていた。
だから、こんなにも晴れない気持ちに陥ってしまっていた。
こんなの嘘ついているのと同じだ……。