シアワセ∞経路
第6章 止まらない気持ち
「塾行かないでデートかー。しかも今日は、お泊まりデートとは!風ちゃん、やるねえ!」
「えっ、何のこと?相手なんていないって」
「うっそー。いつも東高のイケメンと会ってるじゃん。
それに、その大きめのサブバックにお泊まりセット入ってるでしょ」
「ちっ……違うって!ただ一緒に帰ってるだけだし、それはデートって言わないんじゃ……」
「デートだよ!風ちゃんったら鈍感なんだから。ほらっ、早く行きな。あたしらは塾行くからじゃあねー」
ニヤニヤと面白がって見てくる利麻ちゃんに、背中をばちんっと叩き押された。
地味に痛いんですけど……。
一歩前に出されて、二人の友達の目にはすでに映っていた人を知る。
私には、緊張するから自然と見ることができない存在であって。
もう中学校では、待ち合わせができなくなってしまったから途中から合流して一緒に帰ることにしている。
今は、高校の制服を着ている彼。
白いシャツにパステルブルーのネクタイ。
中学の頃よりますます爽やかでカッコよくて、見るたびに口元がにやけてしまう。
「ソラ、なんでここにいるの?今日は、先に帰ってていいって言ったじゃん!」
「暇だから待ってただけ」
「塑羅緒さん……。それをストーカーというのではないでしょうか……」
「ん?どこの誰がストーカーだって?」
「あわわ、すみません!冗談です冗談!来てくれて嬉しいです」
「あはは。友達と順調そうじゃん」
「二人ともいい人だよ」
「そっか、安心した。風子は、友達と同じ塾に行かないの?」
「行きたいけど……行けないんだ。うちの親はそれどころじゃないから」
学校生活は順調になったけど、家庭の問題を新たに抱えていた。
生きていると、どうしてこうも悩みが絶えず降り積もってくるんだろう。