
私と魔界の駐在さん
第1章 プロローグ
数年後。
私は高校生になって、おばあさんは街を離れて「故郷」に帰ることになった。
同じ時期に両親も海外赴任が決まって、
日本で一人暮らしをすることになった私におばあさんは小さなメモを手渡した。
『深雪ちゃん、来月からはここに住みなさい』
『これ、何ですか?』
『私の知り合いの家だよ。ちょっとせまいし、人も多いけどここなら安全だ』
『そんな、お世話になるなんて悪いです。それにお父さんお母さんと相談しないと』
『ご両親にはもう話しあるから大丈夫。女の子の一人暮らしなんて物騒だし、何より深雪ちゃんは「ごちそう」だ』
紫色の薄い紙。
書かれているのは短い住所と
「月光荘」という文字。
『本当はここを出るのは心苦しいんだけど、こればかりはどうしようもなくてね。でも大丈夫、あいつらはちょっとうるさいが腕は確かだ』
きっと、深雪ちゃんを守ってくれるよ。
そう言って、昔と同じ顔でおばあさんは笑った。
