リトル・リトル・バンビーナ
第1章 マスター、お世話します
起きて、シャワーを浴びてきたばかりの将梧は
シルクのバスローブを羽織っていて、髪の毛もタオルで適当に拭いたっきりの生乾きだ。
納得いかないと、顔に書いてあったが、小学生じゃあるまいし、こんなワガママに付き合うわけにもいかない。
大体、アンタ昼になったら、大学の友達とどっかいくんでしょうが。
そんなのんびりしてていいの?
「ふん」
「本日の朝食は、フランスパン、オニオンスープ、サーモンサラダ、
ソーセージとポテト、デザートにはフォンダン・ショコラを用意しております。
お飲み物はお紅茶とショコラ・オレがありますのでお好きなものをどうぞ。
フランスパンにはチョコレートソースを添えて召し上がれ」
テーブルに次々とメニューを並べ、最後にチョコレートソースの注いだ小皿と、ソースがたっぷり入ったビンを置く。
「……チョコレートあるじゃん」
チョコレートソースを目にして、ちょっとだけ目の色が変わる将梧。
「あ、こら。これはパンにつけるの!」
そうだ、こいつ甘党な上に偏食だった。
チョコレートソースのビンなんか出してたら、これとパンだけしか食べない、
なんてことになりかねない。
私はあわてて、テーブルのビンを取り上げようと、手を伸ばす。
が、嬉々とした表情を浮かべた将梧が、ビンを自分のほうに引き寄せた。
……まずい。調子に乗らせる。
「瑠璃、うかつすぎ。下僕がえらそうにしてるからだ」
自分の頬に、かあっと熱が走ったのがわかる。
その一瞬の隙がまずかったのか、将梧が私の方に手を伸ばしたのにも、対応できずあっさりつかまってしまった。
「何すんのよ!」
「でも、こうやってうろたえてる瑠璃は無様だけど、可愛い」
「なっ、な……っ!」
奴のペースに乗せられてる。
将梧につかまれた私はそのまま、ソファに放り出されてしまった。