無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

『へぇ～神谷町駅ってこんな感じなんだぁ～』

　家から駅まで、さほど遠い距離ではなかったのだが、場所は正反対の方向だったし、移動手段はいつも家の車かタクシーだったので、香織は駅を見るのは初めてだった。

　東京駅ほど人はいないが、この駅も結構混雑している。

　香織は人の流れに逆らいながら、とりあえず駅員と話をしようと、窓口に向かった。

窓口の椅子には誰も座ってなく、少し離れた机に若い駅員が何やら作業をしていた。

「すいません……少し聞きたい事があるんですが……」

　香織は申し訳なさそうに若い駅員に話しかけた。

　駅員は香織の声に気付くと、作業を一時ストップさせて窓口の方に来ると、

「どうしたのかな？」

　と聞いてきた。