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1人かくれんぼ〜貴方を呪います〜

第2章 自殺


 こうなれば、他の方法を探すしかない。

 悔しいが、どんなに頑張ってここにいたところで、多分もう飛び降りるのは無理だろう。

 自分の情けなさに、我慢していた涙がまた一粒頬を伝う。

 香織は屋上から飛び降りるのを諦め、学校を出る事にした。

 学校から15分ほど歩くと、高級住宅街がある。

 その中でも、1番目を引くヨーロピアン調の大きな建物が香織の家だ。

 庭には大きなプールとテニスコートもあり、そこはまるでお屋敷というよりは、大きなリゾートホテルといった方がしっくりくるような感じだ。

 いじめを受ける前は、毎日様々な友達が遊びに来ていたが、今となっては誰にも使われる事はなくなった。

 母親の趣味で、家はもちろんのこと、庭や車に至るまで、全てヨーロピアン調で統一されている。

 香織の家がこんなに豪華なのは、父親が都内で5本の指に入るほどの会社を経営しているからだ。

 小さい頃はよく遊んでくれていた父親も、香織が年頃になると、家には滅多に帰って来ず、会社の経営しているホテルに、寝泊まりするようになった。

 母親の事も、妻というよりは、仕事のパートナーとして見ているようで、たまに家に帰ってきても、話す事といったら業務連絡を少し話す程度で、それ以外は会話という会話もしていないようだった。

 それは年頃の香織にとって、煩わしい事を言われないので、好都合な事でもあったし、よくテレビで見るような、家で激しい怒鳴り合いの喧嘩なんかをされるよりは遥かにマシな事だったのだ。

 所詮、親は親、自分は自分と香織は冷めた目で両親を見ていた。

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