テキストサイズ

身代わり妹

第7章 喪失

昼休み、美優の父親が俺を訪ねてきた。


「凌太くん、電話ありがとう! 私の方には何の連絡もないよ。美優の祖父母にも聞いたがどちらにも来てないそうだ……」


─────やっぱり……。

どこか覚悟していたけれど、

八方塞がりになった事に落ち込む。



「今年は美優の誕生日も会えなかったんだ。もう長いこと連絡も取ってない」

「え?」


美優は自分の検査入院の費用と、美姫の大学病院の入院費の事を、父親に相談したんじゃなかったのか?

金は用意出来るって言ってた。

一体どうやって⁈


「あのっ…美優が他に頼れそうな親戚とか知り合いとかは?」

「思い当たる限り連絡してみたが……どこにも来てなかった……」


美優の父親の瞳から涙が零れ落ちた。



「逃げ出したかったんだな、あの母親と美姫から……」


─────逃げ出す……。

そうか……そんなに辛かったんだ……。



「俺がもっと気に掛けてやればっ‼︎」

美優の父親は自分の膝を拳で叩いた。


……俺だって同じ気分だ。


(何で俺を頼らないんだよ⁈ )

握りしめた拳が、ポケットの中の小さな箱に触れた。


美優……

俺はずっと、お前に隣で笑っていて欲しい……。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ