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身代わり妹

第1章 苦悩

由美さんに連れられて、小さい頃から何度かこの家にお邪魔させてもらっている。

初めて凌太に会ったのは、私が5歳で凌太は10歳の時だった。


真ん丸だった凌太の顔は、今は楕円形。


凌太が中学生の頃、突然掠れた声はまたまた突然に低くなった。

グンと出てきた喉仏がやけに大人っぽくて、凌太は男なんだと意識し始めて会う度にドキドキした。


切れ長の目とその瞳に宿した芯の強さは今も変わらない。


"清潔感第一!"

父親の口癖を守るかのように、短く切り揃えられた黒髪。身だしなみもいつもキチッとしている。


薄く引き締まった……口元。

その唇で、姉にキスをするんだ……。



「凌太"先生"、大丈夫だから……」

頭に置かれた凌太の手を、そっと掴んで離す。

わざとらしく"先生"なんて付けてみたら、何だか余計に虚しくなった。


凌太が言う通り、私は疲れやストレスが溜まると動悸や息苦しさに悩まされる。

何度かそれで倒れてるから、医師である凌太はその事を言っているのだろう。


「医者として言ってる訳じゃない…」

哀しそうな瞳でそう言った後、凌太はふいっと顔を背けてしまった。

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