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身代わり妹

第8章 本心

「そんなっ」

俺の手を握っていた美姫の手に、グッと力が篭る。


「嫌っ…はぁっ…死にたく…ないっ……」

美姫は、苦しげな呼吸を更に乱し、見開いた瞳から涙をポロポロと零す。


───自分が生きるために美優を犠牲にするのはなんとも思わないのに、自分は死にたくない?

死にたくないんなら何で…

「ならなんで治療拒否した?」


キチンと治療を受けていれば、こんな事態には陥らなかった。

何年か掛かっても、治療法が見つかったかもしれないのに‼︎


「凌太にっ…会い…たかったからっ……凌太が…好きなの…っ……」


正気かよ?

命を粗末にするにも程がある。


29年間のほとんどを病院で過ごす程に治療が必要な病気なのに、その治療を拒否。

その理由が、俺に会いたいから?


馬鹿にも程があるだろ。

そこまでして美優に見せ付けたいのかよ?



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