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身代わり妹

第9章 再会

「美姫ちゃんを返せっ! 金を払えっ!」

泣き叫ぶ母。


「お気持ちはわかりますが、こちらとしては大学病院で完治されるのを願っての転院処置です。出来る限りの対応をさせて戴きました」

相談室長の困ったような声が聞こえた。



「裁判を起こしてやる!」

母の言葉に、私まで心臓がドキドキした。


「ではその前に……美優さんに貸していた寮の部屋を空けてもらえますか?

それから……職員があなたにお金をせびられたと苦情が多数あるんですが、そちらの返還もお願いします」

事務長が苛立った声を上げた。


─────寮の部屋?

私の借りていた部屋に母が居着いているの?

もしも姿を消さなければ母と住んでいたかもしれない。

そう思うとゾッとする。


「弱者を支えるのは当然だろう! 金持ちなんだからケチケチするな!」

悪びれる様子のない母。


この人は、

働かない自分を棚に上げて、

平然と秋村病院の皆にお金をせびってたって事?


……信じられない。

恥ずかしくて皆に顔向け出来ない……。


でも、何よりそのお金を返さなきゃっ‼︎



「大学病院からもあなたに金銭を要求されていると聞きましたが……」


ああ…本当に情けない…

母は、あんなに愛していた姉の命ですらお金に変えるの?



だから逃げたかった……。

でも、

そのせいでこんなにたくさんの人に迷惑を掛けていたなんて……。


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