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身代わり妹

第10章 新心

ドアが開き、顔を見せたのは凌太だった。


「…っ……お前…」

ベッド脇に立っていた奏佑くんと凌太の視線が合い、そのまま睨み合う。



「凌太っ! 奏佑くんと花純ちゃんがお見舞いに来てくれたんだよ!」

険悪な雰囲気に慌てて身体を起こそうとすれば、今度は凌太が慌てて私に駆け寄った。


「起きなくていい! ていうか起きるなって言われてるだろ!」

凌太に優しく寝かされる。


「婚姻届、出してきたから。

今日から美優は、秋村美優だ」

凌太の優しい笑顔に、心臓が大きく跳ねた。


─────秋村 美優。

瀧川 美優が味わった辛さは全部忘れて、新しい私として幸せになってもいいのかな。


幸せに……なりたい……。



「何かムカつく」

ボソッと奏佑くんが呟いた。


「奏佑っ⁉︎ 」

「あ」

花純ちゃんの苛立った声。


「もう! 帰るよっ、ほら‼︎ 」

花純ちゃんは意外と尻に敷くタイプだったんだ。

私と凌太に笑顔で手を振りながら、奏佑くんを引き摺って帰って行った。



「美優……」

凌太に呼ばれて振り返れば、優しく唇が重ねられる。


「もう絶対に1人で泣かせないから」

溢れ出す涙は、凌太の優しい指が掬い上げる。


いろいろあったけれど、今度こそ幸せになれるのかな?


─────私、幸せになってもいいのかな?


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