テキストサイズ

身代わり妹

第10章 新心

フッと母の口元が緩んだ。

「それにしてもよくやったわね」

「は?」


左手の薬指に嵌められた婚約指輪。

母が指輪に付いているダイヤに触れていた。



「美姫ちゃんには可哀想だけど、まさか美優が凌太さんの子を身籠るなんてね。これで私も安泰だわ」


「やめてよ!」

ダイヤに目を輝かせる母の手を振り払う。



(何でわかってくれないの⁈ )

涙で視界が歪む。


いつでも他人を当てにし、他人のお金すら当てにする。

私が渡せるお金なんて知れていた。

でも、このまま母が凌太たちのお金まで当てにすれば、高額な請求をされかねない。



「きっとその子は美姫ちゃんの生まれ変わりよ」

「違う!」



久しぶりに発作の息苦しさに襲われた。


─────嫌だ。

この子まで、姉の身代わりにされたくない。


母に背を向け、お腹を押さえる。


(怖い。この子まで母が楽してお金を得る手段に使われてしまう……)


心臓が握り潰されるように痛む。

呼吸の仕方がわからなくなったかのように乱れる。


(ダメっ、落ち着かなきゃ……)



ストーリーメニュー

TOPTOPへ