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身代わり妹

第10章 新心

ナースコールへと手を伸ばした時、

タイミング良く看護師さんが検温に入ってきてくれた。

おかげですぐに処置をしてもらい、私は点滴を付けられまたじっと横になっていた。



ガラッ

ノックもなしにドアが開く。


(帰ってこなくていいのに……)

平然と戻ってきた母は、本気で泊まり込むつもりなのかたくさんの紙袋を抱えている。



「バーゲンやってたのよ! 服たくさん買っちゃった」

嬉しそうに袋から服を取り出しては当てている母。

もう、ため息すら出てこない。



「おつりは?」

「ないわよ」

「はぁ⁈ 」


旅館で働いた今月分の給料…

そのほとんどを母は使い切ってきたと平然と言う。

働いてお金を稼ぐ…そんな尊い事を、母は知らないんだ。



「秋村病院次期院長婦人がケチケチしないの!」

「あのお金は入院費に当てるつもりだったんだよ⁉︎」

「入院費くらい凌太さんに出してもらいなさい」


すぐに他人を当てにする…

簡単に、人にお金を貰おうとする…

そんな考え、間違ってる!



「簡単に言わないで! 散々迷惑掛けたから、なるべく自分で負担したいの!」

「じゃああの婦長にお金返してもらいなさい」

「返さなきゃいけないのはこっちでしょ⁈」


どこまで言えばわかってくれる?

何て言えば伝わる?



「あーうるさい! あんたは美姫ちゃんと違ってクソ真面目で可愛くない」

「─────…っ」

美姫ちゃんと違って?

姉がいなくなっても尚、私は比べられ卑下されるの?


「その子は私が美姫ちゃんみたいに可愛く育ててやる」

「やめてよ! 絶対に渡さない」

母の言葉に、私は思わず大声で言い返していた。


絶対に渡したくない。

この子は私が育てる‼︎

私が守るんだっ‼︎




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