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身代わり妹

第10章 新心

フンッ…と小さな笑い声に顔を上げれば、

勝ち誇ったような顔で母が笑っていた。



「美優、あんたには育てられない。

美姫ちゃんと同じ病気でしょ?

あんたも死ぬのよ?」



「─────…っ⁉︎」

ズキンッ

先程収まった筈の痛みが振り返す。


死ぬ?

私が?

そんなの……っ‼︎



「……外まで丸聞こえ」

ドアの開く音がして、涙で歪む視界に凌太が見えた。


「ごめん……」

泣き顔を見られたくなくて手で覆う。


「……美優、入院費の心配はしなくていいから」

凌太はそっと、優しく私の頭を撫でた。


「ごめんなさい……」

お金に余裕なんかない。

働くことの出来ない今、私は凌太に頼るしか術がない。



「まぁまぁ、仲がいいのね」

先程までの冷たい顔は消え、母は笑顔を浮かべていた。



「……2人きりにしてもらえますか?」

母の方を見ないまま、凌太は低い声でそう言った。


「気が利かなくてごめんなさいね」

口に手を当て、笑顔で出て行く母親。



抱き寄せられた凌太の腕の中は、どこよりも安心できる。

気付けば、先程起きかけた発作が治まっていた。


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