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身代わり妹

第10章 新心

ゆっくりと凌太の身体が離れ、その大きな手だけが私の頭の上に残った。


「ずっといるの?」

遠慮がちに凌太が話しかける。

……母の、事だろう。

凌太が病院へ戻ると出て行ってからずっと居る。


「付き添う気みたい……」

母は、私を心配している訳ではないだろう。

ただ、自分の居場所と衣食住を確保したいだけ。



「安静に出来てる?」

「…………」

返事の代わりにじわっと涙が溜まる。


「家に帰る?」

「家?」

コクン、と頷く凌太。



「俺の部屋で同居な?」


そっか……。

私は秋村 美優になったんだ。


「……うん……でも、お母さんが着いてくるって言いそう」

「言っても実際は入れなきゃ入れない」


言いながら、凌太はお腹にキスをする。


「……大丈夫だよ。美優もこいつも俺が守る。俺は美優を守るために医者になったんだから」

「凌太……」



凌太に言われた時、キチンと検査すればよかったな。

そうすればこんなに不安にならなかったのに……。


どうか、この子を無事に産んで育てられますように……。


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