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身代わり妹

第10章 新心

母の実家では、母の兄夫婦が両親と共に暮らしている。

母を母の実家に送り届けた凌太は、遅くまで話をしてきたらしいと由美さんから聞いた。



発作の事もあり心配されたが、隣に凌太がいるのだからと次の日には退院が許可された。


でも、退院したからといっても相変わらず絶対安静。

申し訳ないくらいにただひたすらに一日中横になって過ごしていた。



「美優、入るよ?」

ノックの後、由美さんが部屋へと入ってくる。


私の荷物は凌太の部屋へと運ばれ、私は凌太のベッドに寝ている。

モノトーンに統一された凌太の部屋。

ベッド、クローゼット、勉強机……

余分なものは一切ないこの部屋が、今日から私の部屋。そして私の家だ。



「夕飯出来たよ?」

美味しそうな匂いと温かな湯気が立つ夕飯を載せたお盆を、由美さんが運んで来てくれた。


「すっ…すみません……」

キャスター付きのテーブルに夕飯を置いた由美さんは、起き上がろうとする私の身体を支えてくれる。



「秋村美優っ」

「え⁉︎」

突然由美さんに呼ばれ、驚いて由美さんを見つめた。

由美さんは優しく微笑んでいた。


「美優は凌太の奥さん、私の娘。

家族なんだから遠慮はなしだよ」


娘……

家族……


ずっと母のように慕ってきた由美さんと家族になれたんだ。

嬉しくて、知らずに涙が頬を伝った。



由美さんの作ってくれた美味しい料理を戴きながら、由美さんとたわいない会話を愉しむ。

私は幸せな気分に浸っていた。


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