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身代わり妹

第10章 新心

「ああ、そうだ。美優、これ返すね」

そう言って由美さんが私に差し出したのは、

「あ……」

由美さん宛に郵送した私の通帳と印鑑だった。


姉の贅沢な入院費…

大学病院で同じ事をやっていたとしたら、全然足りてないかもしれない。

そう思い、恐る恐る通帳を開く。



「─────…えっ⁈ 」


通帳は、私が入金した時のままだった。


驚いて由美さんを見上げれば、やっぱりいつもの優しい笑顔。



「あのっ、姉の入院費は⁉︎ 」

「美優のお父さんが工面して下さった」


お父さんが⁉︎

結構な高額だったろうに…大丈夫だったのかな……。


「でも母が病院の皆にっ……」

お金をせびっていた母。

病院の皆にお金を返さなきゃいけない。


「それは、凌太が返した」

あぁ、やっぱり凌太には迷惑を掛けてしまっていた。


「あの、その分も含めて、これは今まで迷惑かけたお詫びで……」

受け取って下さい……そう言い終える前に、


「家族でしょ‼︎ 」

「え?」

少し強まる由美さんの声。



「美優と私は親子になったの。もうそういうのなし!」

由美さんらしからぬ大きな声でそういうと、ふっとまたいつもの優しい顔に戻る。



「赤ちゃんの為に使おう?」

「はい…」


由美さんと凌太の優しさに、気付けば笑顔で頷いていた。



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