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身代わり妹

第10章 新心

流産の危機も去り、私は少しずつ身体を動かし始めた。

最近では、家事は普通にやれるようになってきた。

今日は、朝皆を送り出してからも忙しい。



ピンポーン

1人で留守番の秋村邸に、来客を報せるチャイムが鳴った。


(時間通り。お父さんらしいな)

インターホンの画像を確認してドアを開ける。



「美優、久しぶり! 結婚おめでとう‼︎ 」


玄関のドアを開ければ、満面の笑みを浮かべた父の姿。

両手いっぱいの紙袋は、赤ちゃんの為にと父が買ってくれた服。

そして、父と再婚相手の間に生まれた3人の子供達のお古の衣類が入っていた。



「俺もおじいちゃんか……」

父が感慨深げにそう言い、私のお腹をそっと撫でる。


「ヒカルくんは3歳で叔父さんになっちゃうね」

父と再婚相手の末っ子のヒカルくんはまだ3歳!

その兄姉もまだ8歳と6歳。

私とは異母姉弟だから、彼らは叔父叔母になる。



「ははっ、叔父さんか」

父が楽しそうに笑うから、私もつられて笑っていた。


─────ふと、

父が真面目な顔をして私を見た。



「……お母さんと美姫を、美優に任せっきりにしてすまなかった」


父の目に涙が溜まっていた。

私は慌てて、ブンブンと首を横に振る。


「私、中学を出るまで何も知らなかった。

お父さん1人でお姉ちゃんの入院費やお母さんの付き添いで掛かるお金を負担してたんだよね。

大変だったよね」


一気に話し終えると、涙が溢れ出た。


お父さんだって辛かったよね。

20年間、父の元へほとんど帰る事のなかった母と姉。

感謝する事も、共に支える事もしなかった母に、愛情は冷めて当然だ。




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