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身代わり妹

第12章 新人

「……私もう働いてないからお金ないよ?」

私の言葉に、母の手がピタリと止まる。


「あらっ! 次期院長夫人が何言ってんの!」

強張った作り笑いを浮かべた母の視線が私に向けられる。



「本当に困ってるの。100万でいいから貸して」


─────100万⁉︎

母のねだる金額が倍以上に上がっている事に不安を覚えた。

(完全に凌太のお金を当てにしてる……)


ちゃんと断らなきゃ!

今の幸せは壊したくない。

凌太にも迷惑掛けたくないよ。



「無理だよ」

少し強めにそう言い、お腹の上の母の手を振り払った。


「何よっ! 実の母親に野たれ死にしろっていうの⁈ 」

”野垂れ死に”

その言葉に一瞬心が揺らぐ。



本当に困っているのかもしれない。

あんなに酷い事をされても、私にとってこの人は母親だ。

やっぱり元気で長生きしていて欲しい。


でも……

「私、今は働けないから。もう…ホントにお金ないから」


凌太のお金で生活させてもらっている身。

そのくせ、体調に波があり、家事だって完璧にはこなせてない。

まして散々迷惑を掛けた母の事を、凌太に頼める訳がない。

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