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身代わり妹

第16章 【プレゼント】第一章・宝物

逃げ出した街でも、
思い出すのは、由美さんと凌太と過ごした楽しかった時間ばかりだった。

逃げ出したのに、凌太が忘れられない。

苦しくて、苦しくて…暗闇からは抜け出せなかった。


でも─────

1ヶ月も経たず、私の中に光が差した。

私のお腹に、優太[ゆうた]……凌太との赤ちゃんがやって来たんだ。



「…ゆっ、美優っ、美優!」

目の前で、心配そうに私の顔を覗き込む凌太の声にハッと我に返る。

「ごめん! 何?」
リビングのソファーを占領していた身体を慌てて起こした。

「大丈夫か? まだ煌太[こうた]の夜中の授乳で寝不足だよな」
くしゃくしゃと、凌太が私の頭を撫でる。

「平気だよ。ちょっとボーッとしてただけ」

私が笑えば、凌太も口の端を上げ、笑顔を見せてくれた。

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