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身代わり妹

第3章 解禁

「いや、あの…入院なんて……」

「美優は有休がたくさん残っているから1週間くらい平気よ」

「1週間⁉︎」


病院の仕事は有休がある。

でも夜のバイトに有休はない。

一晩5千円、短くても6日休むとなると3万円も給料が減ってしまう。


姉が凌太に甘えて浪費している分を、返したくても返せないくらいキツキツの生活なのに、呑気に入院なんてしている暇はない。



「あの、大丈夫ですから!

何ともないです。元気です!」

「元気なら倒れる程の発作は起こさないだろ」


ため息交じりの凌太の言葉に、由美さんがうんうんと大きく頷く。


「こう見えて凌太は優秀な医師なのよ?」

「……知ってます」

「じゃあ、凌太先生を信用して従って」


「でも、そんなに長くお休みして迷惑をかける訳には……痛っ⁉︎」

いつまでも首を縦に振らない私の額に、痺れを切らした凌太のデコピンが炸裂した。



「最近発作で倒れる事、多いのか?」

姉と凌太が付き合い始めてからは、発作が少しキツくなり今回のように気を失う事もある。


「……」

額を押さえながら、私は俯いて小さく首を横に振った。


はぁーっと、凌太が大きなため息を吐く。

「美姫の病気は遺伝的な要素が強い。美優だって罹っていても不思議はないんだ。発作だってそのせいかもしれない」


「え……?」

凌太の言葉に、心臓が嫌な音を立て始める。


姉の入院費のためにも、

由美さんや凌太に恩返しするためにも、

私はまだ倒れる訳にはいかないのに……。



「美優の発作の原因、ちゃんと調べよう?」

「───…っ」


凌太の優しい眼差しに耐えきれず、目を逸らす。


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