テキストサイズ

身代わり妹

第1章 苦悩

コンコン
病室のドアがノックされる。


「凌太ぁ」

私を睨んでいた姉の顔が満面の笑みに変わった。


白衣姿の若い医師。姉の担当医。

秋村 凌太[あきむら りょうた]

29歳。姉と同じ年。


……姉の……

─────恋人……だ。



「今日は顔色がいいみたいですね」

笑顔を見せながら姉の頬に触れる凌太。


「凌太さんが来てくれたから顔に赤みが差したんですよ」

嬉しそうに答える母。


「ふふふ」

顔を赤らめ、嬉しそうに笑う姉の顔は本当に綺麗だ。


「凌太ぁ、おはようのキスして」

凌太の背中に痩せ細った腕を回し、病人らしからぬツヤツヤな唇を突き出し、キスをせがむ姉。


「……皆がみてるだろ」

凌太は困ったように笑うと、姉の髪を優しく撫でる。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ