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身代わり妹

第5章 揺心

どうやら今回の合コンは、秋村病院内の男性スタッフとのものらしい。

寮には戻らず、仕事終わりに集まって行くため、朝から合コン用の服装で出掛けていた。



「美優…今日はいつもの手抜きの服じゃないのね」

趣味は人間観察だろうという程、勘の鋭い姉が言った。



「…帰りに…出掛けるから……」


「合コン?」

「…うん」

姉には見透かされてしまう気がして、素直に頷く。


「ふーん……」

そう言って姉は、私から雑誌へと目を落とす。

思わずホッと安堵の息が漏れた。


「合コンなんて…ロクな稼ぎもない人間が呑気ね‼︎ そんな時間があるんならその分働け‼︎」

(……っ⁉︎)

私の顔に紙が投げつけられた。


「何?」

見れば、結構な金額の請求書だ。


「今日は美姫ちゃんの誕生日なのよ? 今流行りのiPadってのを買ったの」

「は?」


得意げな顔をする母。

お姉ちゃんの誕生日は覚えているんだ。

プレゼントも買いに行ったんだ。



─────何で?



私には産まなきゃよかったで、お姉ちゃんはお祝い?

何でそのお金まで私が払わなきゃいけないの?



「何で?」

悔しい、羨ましい、情けない、惨め……

湧き上がる思いが口をついて出ていた。


「は?」

母が私を睨む。

これ以上はやめた方がいい。

わかっているのに口が止まらなかった。



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