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僕らのために

第2章 夏空

「で、お前はどうなんだよ」
「うーん、正直あんまり考えてないかなぁ…。とりあえず大学入って、それから考えてみようかと」
僕は本当に何も考えていなかった。成績は悪くなかったし、一人っ子なせいもあって大学に行くくらいの余裕もあった。うちの学校も進学校のはしくれだったこともあって大学進学するのが普通だったから、自分も進学すればいいだろうという程度に考えていたのだ。
「ふーん、なるほどね~」
浅井先輩は興味深そうに頷いた。
「お二人は?大学進学っては聞きましたけど、その後は」
浅井先輩は高橋さんを見た。つられて僕らも高橋さんを見た。自然と高橋さんから答えることになった。
「ええと…小学校の先生になろうかなって。子ども好きだし」
「なるほど」
ちょっと大人しい気はするが、優しくて子どもに好かれる雰囲気はある。
「浅井先輩は?」
「うーん、わたしもあんまり考えてないかなぁ。とりあえず大学行って…って感じかな」
浅井先輩は武田はもちろん学年で真ん中くらいの僕よりもかなり成績が良い。入れる大学はけっこうあるだろう。
そうこう話しているうちに、バスが目的地についた。海の薫りだ。

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