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僕らのために

第2章 夏空

少し話をしてバスを待ち、海水浴場に行くバスに乗り込んだ。その間高橋さんは特にあまり積極的に話さず、浅井先輩から話をふられて喋る程度だった。おそらく普段も浅井先輩の話を聞く役割なのだろう。
バスは朝早いせいか空いていた。武田は高橋さんに積極的に話を聞いた。
部活はテニス部をしていたこと、浅井先輩とは1年生の時にも同級生だったこと、実家から通える県内の女子大に進学しようと思っていること、兄がいること、など。
武田の質問が不味かった時は、僕と武田でお互いの馬鹿話をした。
1年の時に僕が部活がきつくて体育館のコートで吐いたこと、武田が前回の定期テストで学年で下から3番目だったこと、昨日二人して部活を休んだから次の部活がちょっと行きずらいこと。
「そういえば、二人は進路とか考えてるの?」
会話が一段落して浅井先輩が聞いてきた。
「俺は親父が大工だから、建築士になろうかなって」
「お前の頭で慣れるのかよ」
つい言ったが、これはちょっと不味かった。今日初めて武田の表情がかすかに曇った。武田は前回のテスト後に呼び出され、このままでは希望の工業大学には行けないと言われていたのだ。

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