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僕らのために

第2章 夏空

海の家は特殊な香りがした。海の家を利用するのは小学校の時に家族で海に来たとき以来だったので、その薫りに懐かしさを感じた。目よりも耳よりも、鼻のほうが懐かしさに敏感だと思うのは何故だろう。
海の家の人がもう泳げると言うので、さっそく泳ごうかという話になった。まだ9時なのにこの暑さ、朝のニュースで今年一番の暑さになると言っていたのは確かなようだ。
「ゴメンね、私たちちょっと遅くなると思うから」
そう浅井先輩が言うので、僕らは先に砂浜に行ってパラソルをたてるなどの用意をすることにした。女性には僕らの知らない準備がたくさんあるのだろう。
武田と僕はさっさと着替えて砂浜に向かった。海の家は気密性が悪いので、着替えの最中も下手なことは言えない。
荷物を持って砂浜に行くと、武田が声をかけてきた。
「おい、お前ちょっと喋り方が硬くないか?今日は部活じゃないんだから、もうちょっと気楽に話してもいいと思うぞ」
「そうか?普通に話しているつもりなんだが…」
「そうか、まだ緊張がとけてないのか。まあお前は女性と海に来たことなんてないからな、仕方ないか」
それはそうだが、お前はどうなんだと言い。

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