テキストサイズ

僕らのために

第2章 夏空

武田みたいな男は彼女ができたら真っ先に自慢するはずだが、中学から武田を知っている連中から武田に彼女がいたという話は聞いたことがない。この男の女性遍歴は嘘八百だ。
「浅井先輩、三年生の友達連れてくるって言ってたけど、どんな子だろ。きっと浅井先輩が連れてくるくらいだから、その人も素敵な人に違いない」
僕らは三年生の女子は、女子バスケ部の先輩しか知らない。というか、女子バスケ部の三年生でも顔しか知らない人がいるくらいだ。バスケ部ではないと言っていたから、必然的に知らない人ということになる。
「浅井先輩の水着姿か~、素敵だろうな」
武田の顔がまたにやける。
「だがな、俺たちだって捨てたもんじゃないぞ。バスケ部として日々活動しているから、身体は鍛えてあるし背も一般的に言えば高いほうだ。俺に比べれば劣るが、お前の顔だって偏差値的には50くらいあると思うぞ」
好きに喋らせておく。この男に一々反応していたらキリがない。僕は漫才のツッコミ役じゃない。
「お、来たんじゃないか?」
向こうから浅井さんとその友達らしき女性が一人歩いてきた。普段見ない私服に少しドキリとした。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ