隣り合わせの関係
第4章 闇の住人の生態
―ガチャー…
『ただいま~…』
家には誰もいなかった
お兄ちゃんは
久々に帰ってきたので
地元の友達に飲み会に誘われて
夜遅くなると言っていた
お母さんは海外を飛び回る
ツアーコンダクターの仕事で
家に帰ってくることは
ほとんどない
お父さんは私が産まれてからすぐに
他界してしまった
―ガチャ…
「随分遅い帰りだな」
ドキンッ…
部屋のドアを開けた瞬間
少し低めのハスキーボイスが聞こえた
『…ジル…さん…』
ベッドから立ち上がると
こっちに近づいてきた
「だから、
ジルでいいって言っただろ?」
『あ…』
「呼んで?」
『え…』
「俺の名前
呼び捨てで呼んで?」
はぁ~…
だめだ…
ジルを目の前にすると
緊張して上手く話せない…
こんなんだったら蓮ちゃんに
緊張しないで上手く話せる方法
聞いておくんだった~…
『ジ…ジル…//』
「ん、良い…
これからはずっと
呼び捨てで呼んでほしい」
『わかりました…』
これからってことは
この先もこんな風に
会えるってことかな…?
ふふっ
嬉しいな…