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紫陽花(オルテンシア)~檻の中の花嫁~

第3章 炎と情熱の章③

 男の舌がこじ開けられた口に侵入し、そのぬめりとした感触にたまらない嫌悪感が湧き上がる。逃れようとしても、すぐに舌を絡め取られ、貪られる。
 フッ、と晃司は忍び笑いを洩らした。
「良いか、キスをするときは口ではなく鼻で息をするんだ。ほら、こういう風にな」
 わずかに離れた熱い唇がまた美月の唇に押し当てられる。それに便乗するかのように、晃司の大きな手が美月の大きな胸の膨らみを包み込み、絶妙な力加減で揉みしだく。痛みを感じる一歩手前の―これまで経験したことのない疼くような、むず痒いような不思議な感覚が乳房に走り、揉まれている中に先端が固く尖ってくるのが自分でも判った。
「―!」
 美月は大粒の涙を零しながら、首を振った。自分が何故、この男にここまで酷い仕打ちをされなければならないのかと思うと、美月は、その理不尽さにやり切れない口惜しさを感じた。
 豊満な美月の身体は男の欲望をそそるには十分に官能的で―淫乱にさえ見えたが、成熟した肢体と裏腹に、羞恥や戸惑いといった物慣れない様子が更に晃司を誘う。それは、美月にとっては何とも不幸でもあり、皮肉なめぐり逢わせでもあった。
 それは美月にとって生まれて初めてのキスだった。少女の頃には、いつか自分も大人になったら、恋に落ちて好きな男性とファースト・キスをするのだろうと、その瞬間を半ば不安とときめきの入り混じった気持ちで考えたことは幾度もあった。
 こんな風に嫌らしく胸を揉まれながら、荒々しく口づけられるとは想像さえしなかった。
 美月の瞳に大粒の涙が溢れ、白い頬をつたい落ちる。漸く執拗な口づけから解放されたかと思うと、今度は胸の先端を男の口に含まれた。
 淡い桜色の可憐な乳首を舌先で転がされる度、たまらない嫌悪感が押し寄せる。
 晃司はそれだけでは飽きたらず、空いている方の乳房に手を伸ばし、揉みしだきながら口中でもう一方の乳房を愛撫した。
 子どものように烈しく泣きじゃくりながら、美月は嫌々をするように首を左右に振った。
「お願いだから、もう止めて。許して下さい―」

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