それでもきっと
第1章 油揚げ
そこにいたのは黒く真っ直ぐな髪に反するように真っ白な肌の赤目が印象的な美少年だった。
垂れた黒い耳を見て、こいつは兎だと認識した。
「油揚げくれれば修理費くらい置いてってやるよ」
我ながら自分勝手だとは思う。
が、窓を壊す事に関しては申し訳なさしか心になかった。
黒い兎は油揚げを皿に乗せながら首を横に振った。
そんなに食べたかったのか、と考えていたが目の前に油揚げを突き出し何かを訴えるように指でこれ、とアピールしてきた。
その指の先にはキラリと光る物が刺さるようにして油揚げに乗っかっていた。
「窓のガラスか…」
そう言うと兎は頷き、冷蔵庫から取り出した油揚げの入った袋を俺の胸に押し付けた。